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長期事業用不動産の買換特例(2)
BAMCグループの古谷です。
不動産業界から税理士業界に転身した私からは、不動産に関連した話題を、みなさんにわかりやすくお伝えしていきたいと思います。
さて前回、「不動産の買換え」というテーマを取り上げ、「事業用資産の買換特例」という制度をご紹介しました。賃貸マンション一棟や賃貸ビルを売却して、譲渡所得が発生する場合、この特例が適用できると、譲渡所得税の一部が将来へ繰り延べできる、というものでした。ここでご注意頂きたいのは、この特例はあくまでも納税の一部繰延であるという点。つまり、課税金額がゼロになるわけでもなければ、売却した年度に、税金を全く支払わなくてもよいという訳ではありません。
最近こんな事例がありました。
都内で物販業を営むA社長は、ここ数年会社の資金繰りに悩む日々を送っていました。その原因は、売上の減少に伴う、金融機関からの借入金返済の負担増加。そこでA社長は金融機関に相談したところ、金融機関からは次のようなアドバイスを受けたのです。つまり、会社にはこれといった資産はないが、さいわいA社長には自宅の他、賃貸用不動産があるではないか。そのうちの一棟を売却し、その代金で借入金を返済すればよい。
また現在の相場であれば、返済した後に多少残りがでるので、これを元手に別の収益用不動産を購入すれば、事業用資産の買換えにあたるため、税金の面でも有利である、と。
そこでA社長は、早速懇意にしていた不動産会社に売却を依頼。するとすぐに買い手がみつかったため、従前の打ち合わせの通り、この売買代金を使って会社の借入金を返済することができたのです。
また、A社長個人が別の金融機関からの融資を受けることができたため、他の賃貸マンション一棟への買換えも実現できました。なお、今回のA社長個人の資産売却による、会社の借入金返済は、このままでは会社に対する贈与となってしまいます。しかし会社にはA社長に対して多額の貸付金があったため、お互いの債権債務を相殺。こうして会社はキャッシュ・フローにおいても、決算書においても、かなりの改善を図ることができたのです。
ところが問題はここからでした。A社長は、今回の不動産売買に当たって発生する譲渡所得税は、買換によって、全額繰り延べができる、と思いこんでいたのです。しかも事業用資産の買換特例では、売却金額よりも買換による購入金額の方が大きくないと、そのメリットを全額享受することができない仕組みになっています。今回の売却では、購入金額の方が、売買金額よりも小さかったため、結局繰り延べできない税金、つまりその年の確定申告において支払わなくてはならない税額は、数千万単位にも上っていたのです。結局A社長はご自身の預貯金を取り崩して、納税資金にあてることにしました。
さらに、買換に当たってA社長個人は別の金融機関から借入れをおこしましたが、これはあくまでも、購入不動産からの賃料収入が順調に見込めるとの想定に基づくもの。実際には、引渡を受けた早々に一部の住戸で解約が発生したことや、これに伴うリフォーム費用が発生したため、当初望んだ通りのキャッシュ・フローが獲得できているとは言えない状況です。
不動産の活用は、どうしても目先の収益に目がいきがちになります。しかし、不動産を活用することの本当の目的は、将来のキャッシュ・フローの改善であったはずです。したがって、5年、10年先のキャッシュ・フローがどのように改善されるのか。売却に伴い一時的に発生する税額とその資金原資、そして毎年かかる所得税、住民税その他の税額までも考慮に入れた予測をすることが重要となってきます。特に不動産の売買は、多額の金額が動く大きな買い物です。ぜひとも慎重かつ、大胆なご決断を。
(古谷)



