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金融商品取引法の概要
金融改革の一環として、金融サービスの基盤となる法整備が進んでいます。その第1ステップは、業者の説明義務違反などがあった場合に顧客保護を図った「金融商品販売法」(平成12年5月成立・平成13年4月施行)であり、第2ステップは、業者の業務のあり方などを規制した証券取引法の改正となる別名「投資サービス法」とも称される「金融商品取引法」(平成18年6月成立・平成19年夏施行予定)です。第3ステップとして、「金融サービス法」の立法が予定されています。
時代の流れは政府も金融行政の方針として提唱しているように「貯蓄から投資へ」と変化しており、これに適した投資環境の整備を行って、投資家保護を図る法律です。
金融庁によれば、この法律には4つの柱があるとされています。
第1の柱は「投資サービス」に関する規制、第2の柱は「開示制度」の整備、第3の柱は「取引所の自主規制」、第4の柱は「罰則の引き上げ」です。
ここでは、大雑把な内容にとどめますが、まず、第1の柱について紹介しておきます。
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ポイント1 いわゆる「投資サービス」規制
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【横断的な「投資サービス」規制】
これまでは、株券や債券など有価証券については「証券取引法」、金融先物取引については「金融先物取引法」というように、縦割りの法律が各種金融商品をそれぞれに規制していました。ところが、多様な金融商品・サービスが登場する中で、外為証拠金取引や新種のファンド・組合など、法の網をかいくぐる金融商品が相次いで出現し、投資家が被害を受けるケースが大きな社会問題となっていました。そこで、これまで法律の隙間にあって規制できなかった金融商品も含めて、幅広い金融商品を横断的・包括的に規制の対象とすることになりました。
[1]対象範囲の横断化
有価証券の中に抵当証券を加えたり、集団で投資を行う契約(「集団投資スキーム」)に関する包括的な定義規定を設けて、いわゆるファンド全般を「みなし有価証券」として幅広く規制対象としています。信託受益権も信託財産の種類等を問うことなく「みなし有価証券」とされています。また、これまで証券取引法の規制対象とされてきた証券デリバティブ取引や金融先物取引法の規制対象とされてきた金融デリバティブ取引だけでなく、天候デリバティブ取引などを含めた幅広い範囲のデリバティブ取引を横断的に規制対象としています。
(*) なお、預金や保険は金融商品取引法の対象外ですがその中でも投資性の強いもの(変額保険・年金、デリバティブ預金、外貨預金・保険など)、商品取引所法の対象とされる商品先物取引、不動産特定共同事業法の対象とされる不動産特定共同事業については、金融商品取引法の利用者保護規制が準用され、同様の規制が適用されます。
[2]業規制の横断化
金融証券取引法は、これまでの証券業、金融先物取引業、投資顧問業、投資一任業、投資信託委託業など様々な業の業務内容を広く包含する「金融商品取引業」という包括的な業概念を新たに設けて規制対象としています。ファンドの設定者や運用者が自ら投資者を勧誘する、いわゆるファンドの自己募集も金融商品取引業とされています。
金融商品取引業は第一種金融商品取引業、第二種金融商品取引業、投資助言・代理業、投資運用業に種別が区分され、その種別ごとに登録拒否事由等の規制の程度が異なりますが、いずれにしても内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ行うことはできず、違反の場合には罰則があります。
登録を受けた金融商品取引業者は内閣総理大臣(金融庁)の監督に服し、検査の対象となります。各規制に対する違反は業務改善命令や業務の停止、登録取消などの行政処分を受ける可能性があります。
金融商品取引業者は、業種の種別に応じた本来業務に加えてこれに付随する付随業務を行うことができますが、さらに他の業務を行う場合には、第一種金融商品取引業者および投資運用業者については、内閣総理大臣に届け出た上で行う届出業務、内閣総理大臣の承認を受けた業務に限られます。
(*) 証券仲介業については、その名称が「金融商品仲介業」に改められるとともに、有価証券関連以外のものも含むデリバティブ取引の媒介および投資顧問契約等の締結の媒介を業として行うことを新たに業の対象として追加されています。金融商品仲介業を営もうとする者は内閣総理大臣の登録を受けなければならず、金融商品取引業者と同様の行為規制を受けますが、さらに、仲介行為を行おうとするときは予め所属金融商品取引業者の名称や代理権がない旨を顧客に告げなければならないものとされ、また、顧客から金銭や有価証券の預託を受けてはならないとされています。
(*) 適格機関投資家のみを対象として、あるいは適格機関投資家と少数(49人以下)の非適格機関投資家のみを相手方として行われるファンドの自己募集および財産の投資運用(適格機関投資家等特例業務といいます)だけを行うものについては、金融商品取引業に係る登録義務を課さず、代わりに届出を義務付けることとしています(特例業務届出者といいます)。そして、この特例業務届出者に対しては、行為規制のうち、虚偽の説明の禁止と損失補填の禁止だけが適用されます。
(*) 銀証分離については、従来とほぼ同様です。銀行、協同組織金融機関その他政令で定める金融機関は、有価証券関連業(これまでで言う証券業)および投資運用業を行ってはならないとされていますが、投資目的又は信託契約に基づいて信託する者の計算において行う有価証券の売買や有価証券関連デリバティブ取引は禁止の対象から除外され、金融機関が、書面取次ぎ行為、一定の有価証券関連業、デリバティブ取引(有価証券関連デリバティブ取引等を除く)、集団スキーム持分等の募集又は私募を業として行おうとするとき、または投資助言・代理業もしくは有価証券等管理業務を行おうとするときは、内閣総理大臣の登録を受けなければならないとされています。
[3]行為規制の横断化
金融商品取引法は、金融商品取引業者に対して課される行為規制についても、以下の基本的な行為規制については金融商品取引業者等(金融商品取引業者+登録金融機関)一般に適用されるような形で定めて、できるだけ横断化を図っています(ただし、IKなど適用対象を限定しているものもあります)。
@顧客に対する誠実義務
A標識の掲示義務
B名義貸しの禁止
C社債の管理の禁止等
D広告等の規制
E取引態様の事前明示義務
F契約締結前の書面の交付義務(書面には、契約の概要、手数料・報酬等、相場変動等による損失の可能性、損失額が元本割れする可能性があること等を記載しなければなりません。)
G契約締結時等の書面の交付義務
H保証金の受領に係る書面の交付義務
I書面による契約の解除制度(クーリング・オフ)
J虚偽の告知・断定的判断の提供等の禁止
K不招請の勧誘(頼みもしないのに勝手に電話や訪問をして勧誘すること)・再勧誘の禁止、
L損失補填等の禁止
M適合性の原則の遵守(顧客の知識・経験・財産の状況及び投資目的に見合わない勧誘をしてはならない)
N最良執行方針等の作成と書面の交付義務
O出資金の分別管理が確保されていない集団投資スキーム等の売買の禁止
P利益相反取引の防止
(*) その他、投資助言・代理業および投資運用業に関してだけ行為規制をしているものがあり、また、投資助言業務に関する特則、投資運用業に関する特則、有価証券等管理業務に関する特則を定めて、業務の性質に応じた柔軟な行為規制を定めています。
さらに、複数の種別の業務を兼営する場合や登録金融機関が金融商品取引を行う場合、親会社又は子会社が関与する場合などの弊害防止のための禁止行為を定めています。
【「投資サービス」規制の柔軟化】
金融商品取引法は、金融商品取引業全般を通じて横断的に規制する一方で、硬直的な適用によって業者に対して過剰な負担を課さないように配慮しています。その1つは、業務の性質に応じた柔軟な規制であり、もう1つは、対象顧客の知識・経験(プロ投資家か一般投資家か)に応じた行為規制の柔軟な適用にあります。
プロ投資家のことを「特定投資家」といい、特定投資家に対する金融商品取引契約の勧誘や締結等あるいは投資顧問契約・投資一任契約の締結などを行う場合には、契約締結前の書面交付義務等、業者と投資者との間の情報格差の是正を目的とする行為規制を適用しないものとしています。
「特定投資家」とは次の者を指します。
@適格機関投資家・・証券会社、銀行等の預金取扱金融機関、保険会社、投資顧問業者その他一定の事業者
A国
B日本銀行
C投資者保護基金その他の内閣府令で定める法人・・上場会社等
(*) 特定投資家でない法人、匿名組合契約を締結した営業者である個人又はその知識、経験及び財産の状況に照らして特定投資家に相当する者として内閣府令で定める要件に該当する個人は、自己を特定投資家として取り扱うよう申し出ることができます(特定投資家への移行)。
(*) 特定投資家のうち、投資者保護基金その他の内閣府令で定める法人は、金融商品取引業者に対して、特定投資家以外の顧客として取り扱われることを申し出ることができ(一般投資家への移行)、この申し出があった場合、金融商品取引業者は正当な理由がない限り申し出を承諾しなければなりません。
(弁護士 緒方 義行)
緒方 義行 Yoshiyuki Ogata
プロフィール
扶桑合同法律事務所 パートナー弁護士
東京弁護士会所属(47期)
佐賀県出身
●主な取扱分野
・一般民事・商事事件(紛争解決、民事訴訟、会社関係訴訟、保険法)
・一般企業法務(定款、株主総会、資本政策、事業承継、各種商事契約)
・労働関係法務(就業規則、雇用契約、出向・転籍・派遣、懲戒)
・倒産事件(法人・個人破産、会社清算・特別清算)
・不動産関係事件(不動産売買・賃貸借、管理)
・建築紛争事件
・一般家事事件
●経歴
1987年 3月 早稲田大学政治経済学部卒業
1992年 10月 司法試験合格
1995年
3月 司法修習終了
4月 弁護士登録
芦苅法律事務所(現 星川法律事務所)入所
2003年 1月
扶桑合同法律事務所にて独立(現職)
●所属研究部会
・会社法部会(東京弁護士会)
・知的財産権法部会(東京弁護士会)
・倒産法部会(東京弁護士会)
●弁護士会活動
1997年 4月 民事訴訟法改正問題特別委員会(〜翌年3月)
2003年 4月 日弁連
代議員(〜翌年3月)
東京弁護士会 常議員(〜翌年3月)
2004年 4月
(財)日弁連交通事故相談センター・東京支部委員会
●著書等
・「取締役退職慰労金の不支給・低額化に関する問題について」
(東京弁護士会・法律実務研究)
・「株主対策実務ハンドブック」 (共著・第一法規)
・「株主総会の運営と決議Q&A」 (共著・第一法規)
・「新会社法は実務を変える!」 (共著・税務経理協会)
・「新会社法施行規則案のすべて」 (共著・税務経理協会)
・「誰にも分かる会社役員の法務と税務」 (共著・新日本法規)



