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中年会計士の、ちょっとだけ聞いて欲しい独り言(5)



税務諸表\皆さん、明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いいたします。  公認会計士の富田です。

 前回、「エクスペクテーション・ギャップ」についてご説明しました。財務諸表に少々の誤りがあっても「全ての重要な点について適正」である旨の監査意見が表明されるというところをご理解いただけたでしょうか?
 会社の財務諸表の利用者のうち、投資家であれば今後その会社への投資を継続するかどうか、新たに投資するかどうかの意思決定に財務諸表を利用するでしょう。その際にこれら投資家の方々が、投資意思決定を行う上でその判断を大きく誤ることがないであろう範囲であれば、財務諸表に誤りがあっても許容されるという考え方なのです。一方、一般の方々が監査に期待するのは正しい財務諸表が開示されるようチェックすることで、誤りが許容されるとの考え方はなかなか受入れがたいのです。このように財務諸表監査の実態と一般の方々の意識とのギャップがエクスペクテーション(期待)・ギャップと呼ばれるのです。
 
 この、エクスペクテーション・ギャップには、もう一つ論点があります。
バブル崩壊後のY証券が3月決算締め後5月に決算発表、6月に監査法人の「適正」との監査証明のついた有価証券報告書を金融庁(当時は大蔵省)に提出してほどなく破綻したのを記憶しておられる方も多いかと思います。
監査法人が財務諸表には問題がないと判断した企業が突然破綻するとはこれいかに!公認会計士がお墨付きを与えた企業が倒産するとは・・・・・。世の多くの方々がそのような印象を強く持たれたに違いありません。

 「監査意見」は、破綻しそうな会社であれば破綻しそうな実態を示す財務諸表を作成し、適切に開示していれば「適正意見」、そのような実態を適切に開示していなければ「不適正意見」となります。つまり、「監査意見」は会社が破綻するかどうかについての意見を表明するものではないということです。
 このようなエクスペクテーション・ギャップは、一般の方々の誤解ではあるものの、実際に財務諸表監査に期待される役割であるなら、これに積極的に対応すべきなのは当然です。

 そこで、継続企業の前提に関する「追記情報」が制度として導入されることになりました。企業を継続していくことについて重大な疑義がある場合には、経営者は積極的にこれを財務諸表に注記することを義務づけ、そういった事実があることを財務諸表の利用者に対してあらためて注意を喚起する意味で監査報告書にその旨を記載することとされています。数年前事実上経営破綻したスーパーのD社の監査報告書にも当時、銀行団の融資の行方によっては会社の継続に疑義が発生する可能性がある旨の追記が行われています。
 
 黒字企業が突然破綻することは本来ほとんどないことだと思います。皆さんもご承知のように有価証券報告書には「事業のリスク」「対処すべき課題」「財政状態・経営成績の分析」など経営情報が満載されています。これらの記載の中に、財務情報の理解を助ける様々な情報が盛り込まれており、投資判断に資するよう制度化されているのです。
 
 これから益々寒くなるかと思います。どうぞ皆様方、ご自愛のほどお祈りしております。
 
富田でした。

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