HOME >> 経営に生かせる人事・労務・法律の知識 >> 抵当物件の競売と賃貸借(1)
抵当物件の競売と賃貸借(1)
――――――――――――――――――――――――――――――――
いまさら聞けない!お金と人と組織のこと
― 経営者、起業準備の方必見です!―
抵当物件の競売と賃貸借(1)
――――――――――――――――――――――――――――――――
弁護士の緒方義行です。
今回と次回は、抵当物件の競売と賃貸借について考えてみます。
多くの会社はビルの1室やフロアーを事務所や事業所や店舗として借りておられることだと思います。そして、そのビルには大抵の場合、金融機関が抵当権を付けています。
そのような場合に、建物が競売(抵当権の実行)されてしまったら、賃貸借の権利や敷金はどうなるのでしょうか。今回は、短期賃貸借の制度の廃止と明渡猶予期間の制度について説明し、次回、抵当権者の同意登記の制度について説明しましょう。
この問題は、平成15年の民法改正(施行は平成16年4月1日)の前後で大きく考え方が変わったところですので、賃貸借の時期によって分けて考えることになります。
| 1 | 平成16年3月31日までに設定された賃貸借†短期賃貸借の制度 |
|
改正前の民法395条は,抵当権設定登記後に対抗要件を備えた賃貸借であっても、短期賃貸借†民法602条の定める期間(建物については3年)を超えない期間の賃貸借†に限っては、抵当権者に対抗できるとしていました。 これにより、賃借人は、その契約で定めた短期の賃貸借の期間中に限っては、競売(抵当権の実行)の後も、建物を借りていられるとされていました。 そして、敷金についても買受人に承継され、賃借人は買受人に敷金の返還を請求することになるとされていました。 |
|
| 2 | 平成16年4月1日時点以降に設定された賃貸借†明渡猶予期間の制度 |
|
民法の改正によって、短期賃貸借の制度は廃止され、抵当権設定登記後に対抗要件を備えた賃貸借は,たとえ短期の賃貸借であっても、抵当権者(買受人)には対抗できないことになりました。 しかし,建物の賃貸借についてだけは、抵当権設定登記後に対抗要件を備えた賃貸借であっても、競売手続の開始前から使用・収益を行っている賃借人は,買受人が建物を買受けた時点から6か月の明渡猶予期間を経過するまでは,その建物を買受人に引き渡さなくてよいとされました。逆に言えば、この明渡猶予期間を過ぎたら、建物を明け渡さざるを得なくなるわけで、この明渡猶予期間中に引越し先を探す等をしなければならないということになります。 この明渡猶予期間中は建物の明け渡しが猶予されているだけで、賃借権は消滅しています。したがって、建物の使用者は、買い受けから明け渡しまでの間の建物使用の対価(通常の賃料相当額)を買受人に支払わなければなりません。これを1ヶ月以上支払わないでいると、催告の後に明渡猶予期間を失うことになります。 また、賃借権は消滅しているわけですから、買受人は賃貸人としての地位を引き継ぐわけもなく、敷金は承継されないことになります。したがって、賃借人としては、従来のオーナー(旧賃貸人)に対して敷金の返還を請求するほかありません。しかし、競売を受けるような旧オーナーに敷金を支払う資力があるとは思えません。そこで、競売実行による差押えの後は,賃借人は,事実上、旧オーナーに対して、敷金額まで賃料の支払を停止するなどの対策をとることになります(法律上、不安の抗弁権として構成する見解もあります。)。 |
次回は、抵当権者の同意登記の制度について説明を続けることを予定しています。
(弁護士 緒方義行)



