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中年会計士の、ちょっとだけ聞いて欲しい独り言(10)



皆さん、お元気ですか。公認会計士の富田です。

 ここ何回かは「内部統制」について少々くどくご説明してきました。そこで、しばらくは、この「内部統制」の不備で具体的にどのような不正や間違いが起きるのかを事例によりご説明したいと思います。
 
 もう10年以上前になりますが、D銀行がニューヨーク支店での不祥事により平成8年3月期の決算で総額1,491億円にものぼる特別損失を計上しました。新聞の他様々のメディアで取り上げられましたので今でも記憶しておられる方も多いかと存じます。1人の銀行員が、不正な投機取引に手を出し、そこで発生した損失の穴埋めをするために無断で有価証券を売却していたという驚愕の事実が明るみになったのです。
 
 銀行といいますと大変お堅い業界で、大蔵省(現在の金融庁)検査、日銀考査、監査法人監査、行内検査と、これでもかと言うくらい様々な機関からチェックが入っていました。それにも拘わらず、このような不正が行われたということは相当高度なテクニックを使い、裏の裏を画く工作が行われたのではないかと想像されることでしょう。
 
 しかし、実態は以下のようなものでした。D銀行のニューヨーク支店では、営業上の都合で一般の営業業務はミッド・タウン(マンハッタンの中央部)で、証券保管業務はダウンタウン(マンハッタンの南端−証券街)でそれぞれ分離して行われていました。このうち、ダウンタウンでは証券投資売買業務、管理記帳事務、証券保管事務、証券取引決済事務、送金事務、調整事務という証券に関わるほぼ全ての業務が犯人の独占的な管理の下行われるようになっていたのです。
 
 このような管理組織でどういったことができるかは、皆さんも容易に想像することができるのではないでしょうか。不正に債券の売買取引を行ったとしても、取引に係る払込等決済、伝票作成、記帳、全て思いのままに操作し、どれだけの損失が発生してもこれをいくらでも先送りすることができるわけです。卑近な例で申し上げれば、現預金の取扱担当者と記帳担当者はそれぞれ別の担当者にすべきだということはよく言われることですが、管理の厳しいはずの銀行でまさにこれと同じ状況になってしまっていたのです。
 
 業務を複数人で分担して行わせるという組織組成のイロハのイを怠ったために、これほどに大きな損失が発生してしまったのです。
 
 D銀行での不正は、10年以上もの長い間にわたってずっと行われていたそうです。それでは、文頭で申し上げました各検査機関は一体何をしていたのでしょうか?次回は、この点をご説明したいとともいます。
 
 富田でした。

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